秋元康氏(WBSの画面から)秋元康氏(WBSの画面から)

 AKB48や乃木坂46などのアイドルグループの生みの親で作詞家の秋元康氏(62)が10月28日放送のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト(WBS)」(月~金曜日午後11時)の「コロナクライシス トップの決断 番外編」のコーナーに登場、コロナ時代のエンタメの未来について「熱狂とは何か?が最大のテーマではないか」などと語った。

 放映されたのは、乃木坂46の絶対的エース白石麻衣の卒業コンサートが終わった直後だった。白石の卒コンは、当初予定された東京ドーム公演から配信・オンラインライブに形を変えて行われたが、いまやエンタメの世界はコロナ前から大きく様変わりしている。「会いに行けるアイドル」の象徴、握手会は休止状態、規模の小さいライブも密を避けるため入場者制限は当然で、ファンの掛け声(コール)も禁止されている。

 

秋元康氏(WBSの画面から)
秋元康氏(WBSの画面から)

 

 秋元氏は、ウイズコロナの時代のエンタメについて、「3密を避けるということはエンターテインメントの熱狂の反対側にあるので、大変だとは思いますが、エンターテインメントはコロナによってどう変わるかではなく、この世界や生き方がどう変わるかで、ここに合わせたエンターテインメントがあるだろう」とし、「今は熱狂とは何か?が最大のテーマではないか」と見定めた。

 そして「熱狂というのは狭い空間の中で密になり、汗を飛ばし応援する。ライブって、そういうものだった。一緒に熱狂を感じていたものが、熱狂が危険だとされる今の状況が、これからのエンターテインメントにどう影響していくか…」

 45年間もの間、エンタメ業界の先頭を走ってきた秋元氏にとっても、未来は手探り状態であることに変わりはない。

 白石の卒コンなどのオンラインによるライブ生配信は、収容人数に制限がなく、遠方でも視聴できるメリットがある。だが、一方で秋元氏にはこんな懸念も口にする。

 「人間の目は、自分が見たいものを見ている。ところが配信・オンラインでライブや舞台を見ると、やはりスイッチングされているので、自分が見たいものではない。全員が同じものを観なければいけないという、そこに不自由さはあるような気がする」

 「熱狂」の生み出し方にも変化が生まれている、という。

 「(制作サイドは)視聴者が見たいものを一生懸命探す。マーケティングリサーチをする。ここにはどんなお魚がいるのかなと、みんなが同じように調べるので、みんな同じようなエサで、同じような場所に釣り糸を垂らすようなことになってしまう。視聴者のみなさんからお叱りを受けるのは、どの番組見ても同じじゃないか。視聴者が見たいものも、すごく大事なんですが、作り手側が作りたいものを作って(視聴者が)どう受け止めてくださるかという時代に来ているのではないか」

 秋元氏が、エンタメの未来像として予見しているのは、誰もが楽しめる「最大公約数の番組」ではなく、特定の人の心に訴える「最小公倍数の番組」つくり。たとえば歴史的な大ヒット中の映画「鬼滅の刃」は、まさにそうした作品という。

 「鬼滅の刃にしても、アニメ化されてもまだ一部の人たちが熱狂していたものが、普段はアニメを見ない人が面白いんだって、と言って広がっていき、今回の大ヒットになるような、ああいう世代や層がドミノ倒し、パタパタパタと倒れていくようなヒットのし方をするのではないか」

 秋元氏が企画・原作を手掛けたドラマ「共演NG」が同局でスタートしたが、「僕なんかはまず虫メガネで太陽光線を集めて…集めないと発火しないじゃないですか。発火させるポイントをどこにするかということは考えますよね。あんまり広いとフォーカスが合わないと、結局、帯に短したすきに長しで、だれにも刺さらない中庸なものになってしまうので、1000人、1万人の中で「面白そうだ」より、10人が熱狂的に「面白い」と思うことがわれわれの狙いではありますね」

 10人を「熱狂」させる“ものづくり”こそ、エンタメの未来。どうやら、これが秋元氏の結論だったようだ。