【驚くのは時限爆弾だけじゃない】
時限爆弾付きの新株予約権をつかまされた秋元康氏をめぐって、もうひとつ驚かされたことがある。
新株予約権を発行した株式会社KeyHolder(銘柄コード4712)に自らの預金残高まで開示させられていたのだ。汚い表現だが、“ケツの毛まで”むしり取られかねないと、他人事ながら心配になる。
もう一度、この驚愕の「新株予約権」の概要をおさらいしておきたい。
KeyHolder社は2018年6月18日に「第三者割当により発行される新株予約権の募集に関するお知らせ」と題するプレスリリースを公表し、新株予約権32万294個、総額3202万9400 円(新株予約権1個当たり 100 円)の発行(割当日は7月24日)を決議したことを明らかにした。
行使価額は125円、全株行使されると、約40億円となる。そして、発行先として以下の3名の名前を公表した。
◇秋元 康氏 250,666個(2506万6600株)同日、KeyHolder社特別顧問就任
◇秋元 伸介氏 55,703個(557万300株)
◇赤塚 善洋氏 13,925個(139万2500株)
【死ねばもろとも…】
行使条件として、まず次の3パターンを提示した。
- 連続する5取引日の株価終値が行使価額に 120%を乗じた価額を上回った場合(150円):30%(行使可能)
- 株価終値が 200 円:60%(行使可能)
- 株価終値が 260 円:100%(行使可能)
おそらく秋元氏をはじめ取引にかかわった全員が株価260円超えを信じていたはず。仮に260円で全株行使できれば、3人は濡れ手に粟で「40億円」もの巨額マネーを手にでき、笑いが止まらなかったろう。
だが、この新株予約権には何度も書いたが、時限爆弾が埋め込まれていた。
「株価終値が一度でも行使価額に50%を乗じた価額を下回った場合、新株予約権者は残存するすべての本新株予約権を行使価額で行使期間の満期日までに行使しなければならないものとする」と定められていた。
つまり、株価が終値で62.5円を下回ると、全株を125円で否応なく買わなくてはいけない。
どうしてこんなバカげた条件がついたのか。
「当社株価の下落時には本新株予約権の割当予定先が株価下落に対して一定の責任を負うことで、株価変動リスクを既存株主の皆様と共有することが可能となります」と説明してあった。死ねばもろとも…といえばいいのか。株価下落で犠牲になるのは全株主ということで、平等といえば平等かもしれないが。
行使期限は2028年7月23日なので、あと8年の猶予はあるが、このKeyHolder社、相当えげつなさそうでもある。
【秋元氏の貯金額12億円!】
KeyHolder社は新株予約権を発行するにあたって3人のフトコロ事情にまで容赦なく手を突っ込んでいる。
プレスリリースの9ページ目で「秋元康氏については、同氏の預金通帳の写しを受領し、本新株予約権の権利行使に係る払込みに要する資金の約4割を有することを確認した上、当該資金が自己資金である旨の説明を受けております」と、秋元氏の預金額を暴露している。
必要資金の約4割、12億円前後の預金残高を確認したというわけだ。
「(秋元弟の)秋元伸介氏については、同氏の預金通帳の写しを受領し、本新株予約権の権利行使に係る払込みに要する資金の約5割を有することを確認しております」とした。こちらは預金残高3億5000万円前後を把握されたわけだ。
リリースで、秋元氏らは「当社経営に携わっていく上でも、一定の数量に関しては中長期に亘って保有する方針である旨及び、各施策を通して展開する今後の活動に対して責任を持って取り組んでいただけるとの想いと意思を、口頭で確認しております」とも伝えている。
全行使すると第2位株主に浮上する秋元氏には、「大株主として逃がさないぜ」と恫喝しているようで怖いね。
秋元氏には預金だけで手元に12億円の現金があることがわかっている。8年先の行使期限までのんびり待ってくれるような会社じゃないだろう。
親会社のJトラスト社も金融ビジネスが中心だが、けっしてお上品な会社ではない。むしろ“ハイエナ”のような会社なのだ。
(この項つづく)