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 この夏の東京五輪開催「中止」の可能性を報じた海外発のニュースが話題になっている。が、国民のほとんどは「なにを今さら…」と冷めきっているのではないか。五輪をモチベーションに厳しい練習に耐えている選手のみなさんには申し訳ないが、逆に「まだやる気なの? それって正気?」というのが多くの人々の本音ではないか。

東京五輪中止の可能性、米紙が報道 IOCでも「安全な大会開催は不可能」との声も

東京五輪コロナ理由に中止の可能性 米NYタイムズ報道


 自治体主催の「成人式」すら開催できなかった。東京23区では唯一、杉並区が強行突破したが、猛バッシングを浴びた。成人式よりはるかに規模の大きいイベントである五輪を無事に開催できると楽観しているなら、その根拠は何なのか。IOCや日本政府、組織委には納得できる説明をしてもらいたいものだ。

 菅首相は「人類がウイルスに打ち勝った証しとして東京大会の開催を実現する決意」と繰り返しているが、「ウイルスとの戦いは長期戦」と覚悟している向きが多い。日々、報道される感染者数の推移をみると、1年前と比べ、状況は悪化している。それが、五輪開催までのあと数カ月で、それこそ劇的に好転するものなのか。

 たしかにワクチンの接種が開始されれば、その効果もできよう。また、現在の冬の季節と違って五輪開催は夏の時期だけに、ウイルス活動が停滞する可能性もある。

 でも…。外食ランチすら危険(物議をかもしたが…)と言い出している現状認識と、「五輪は開催できる」とする楽観論の、あまりの差に愕然としてしまう。

 ネット上の“解説”を読むと、

 「中止、契約解除ができるのは、IOCだけ。開催国側は中止や契約解除をする権利はない。日本にできるのは、IOCに開催国には問題が無いが、世界情勢から判断して中止するという決定をさせること。そういう意味で、現時点で日本側の関係者から中止を求めるような言動を公にはできない」

 「日本の判断で中止にするのとIOCの判断で中止にするのでは責任の度合いが違うから言えないだけ」 
 といった背景もあるらしい。

 Youtubeでは、「(組織委が)自分たちで中止を言うと、月200万円程度もらえている給与がゼロになり、失業する。頑張って開催すると言い続ければ、黙って200万円をもらえる。しかも(影響を受けるのは)自分ひとりではない。だから言えない」と解説する動画も流れていた。

 かつて愛読していたミステリー作家のひとり、小峰元さん(毎日新聞元記者)の作品に「イソップの首に鈴をつけろ」がある。五輪問題のニュースを読みながら、このタイトルを思い出した。IOCバッハ会長、菅首相、組織委の森会長の首に“鈴”をつけるのはだれなんだろうか。


 
 【東京五輪中止可能性との報道】
 米有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が15日、新型コロナウイルスの影響で今夏の東京五輪の開催見通しが日々厳しさを増しており、第2次大戦後、初の五輪開催中止に追い込まれる可能性があると報じた。
また、これより先に、IOCのディック・パウンド委員(カナダ)が、新型コロナウイルスの影響で今夏の東京五輪が開催されるか保証はないとの見解を示したと、英BBC放送(電子版)が伝えた。IOCで最古参委員のパウンド氏は「私は確信が持てない。誰も語りたがらないがウイルスの急増は進行中だ」と述べた。