KeyHolderの組織図KeyHolderの組織図

 われらが“秋元先生銘柄”、JASDAQ上場のKeyHolder社(銘柄コード4712)に今週重要な動きがあったので書き留めておきたい。

【10株を1株に…株式併合】
 まずは株価を見てみよう。
 今週末(14日)の終値は1074円(前日比67円安)だった。
 おや、こんなに高かった?と疑問に思った方が多いはず。同株は13日(取引分)から10株を1株に併合したため、株価が計算上、10倍になったのだ。

 株式併合前の最後の取引となった12日の終値は115円だった。株式併合後最初の取引となった13日は前日比9円安、14日は同67円安(調整後株価)と2日続落して、今週の取引を終えた。

 同社では、100円そこそこの株価だと1日の変動率が大きく、投機的な取引の対象になりやすいこと、積極的なエクイティファイナンスの実施によって発行済み株式数が膨張したことなどを理由にあげ、投資家に対し、株式併合のメリットを説明していた。

 現役記者のころ、医療系情報のネタ元として2度詐欺で捕まった人としばらく付き合っていた。口調は理路整然、いつも高級スーツにロレックスの時計などを身に着けていた。そして、いつも取材で会う場所として、彼が指定したのは超高級ホテルだった。人を信用させるには“見てくれ”が大事だということがよくわかった。

 KeyHolder社に話を戻すと、株価100円台では“倒産予備軍”に思われかねない。1000円台のほうが見栄えがいいし、投資家からの信用も得やすいということになる。

【利益見通しに修正なし?】
 12日引け後に2020年12月期第2四半期の決算発表を行った。
 上半期は6億2600万円の赤字となった。が、通期見通しは4億円の黒字を据え置いている。
 コロナの影響で日本経済自体が落ち込み、同社が事業の柱とするエンタメ業界も、有観客のライブや握手会ができないなど相当な打撃を受けているはずだが、どうやって黒字をひねり出すのか、同社の決算マジックを楽しみにしたい。

 なお、不動産関連事業の子会社、キーノートをグループ企業のプロスペクト(銘柄コード3528、東証2部)に株式交換によって譲渡することも決めた。経営リソースをエンタメ事業に集中する狙いと思われる。これはこれで納得できる選択だが、プロスペクトは14日終値37円の会社である。

 いやはや…。このグループから、なんともいえない“いかがわしさ”を感じてしまうのは私だけだろうか。

【乃木坂運営のノース・リバー社の買収完了】

 今週の動きでハイライトは、同社が12日に発表した「(経過事項)株式会社ノース・リバーの株式取得に関するお知らせ」のニュースリリースだ。乃木坂46合同会社の株式の半数を持つ「ノース・リバー社」の100%買収が完了したことを報告する内容だった。(なお買収完了日は8月14日付)

 同社がAKB48や坂道グループの生みの親、秋元康氏(62)を「特別顧問」に迎え入れたのは2018年6月18日付だった。その5か月後、「SKE48」を30億円で買収する。

 そして今年5月14日、「乃木坂46」の運営会社である「乃木坂46合同会社」(以下「乃木坂46LLC」という。)の持分の50%を保有する、株式会社ノース・リバーの全株式を取得することで基本合意した、と発表した。乃木坂46LLCの残り50%はソニーミュージックの子会社が保有している。

 ノース社の株主構成は以下のとおりだった(全株式200株)。

  • 秋元康 … 45%(90株)
  • 京楽産業 … 35%(70株)
  • AKS(現ヴァーナロッサム、Vernalossom) … 15%(30株)
  • 秋元伸介(秋元弟) … 5%(10株)

 その後、2回、ニュースリリースで経過報告が行われた。

 2020年6月9日 株式会社Vernalossomからの譲渡完了(30株)
            取得価額は9億円(1株3000万円)

 2020年6月9日 京楽産業.株式会社からの譲渡完了(70株)
            取得価額は21億円(1株3000万円)

 2020年7月1日 全株式取得予定日だったが、秋元兄弟分の譲渡について発表なし

            交渉は継続していると説明していた

 2020年8月12日 秋元兄弟からの譲渡完了
            秋元康氏の90株の取得価額は63億円(1株7000万円)
            秋元弟の10株の取得価額は7億円(1株7000万円)

 (※ちなみに秋元弟分の10株はKeyHolder社ではなく、連結子会社FA Project社が買い取っている)

 この結果、秋元兄弟には買収の対価として総額70億円が支払われた。
 だが、待ってほしい。
 この取引、何かおかしくないか?

 【1か月で2倍以上に】
 買収にあたって、当然厳格・公正なデューデリ(査定)を行ったはずだ。KeyHolder社はれっきとした上場企業なのだから。

 その結果、1株3000万円という企業評価となり、株式会社Vernalossomと京楽産業.株式会社から計100株(総額30億円)を買い取っている。

 だが、秋元兄弟との取引では1株7000万円(総額70億円)に2倍以上、ハネ上がっている。わずか1か月や1か月半でノース社の企業価値が飛躍的に上昇したというのだろうか。このコロナ禍、経済活動が停滞している中だというのに…。

 前者と同じ評価なら秋元兄弟への譲渡価額は30億円のはず。それが70億円になっている。差額の40億円分は、秋元兄弟への利益供与に当たるのではないか。私自身、M&Aの実務経験があるわけでもなく、法律の専門家でもないので断定的なことは言えないが、あまりにも釈然としない取引ではないか。

 KeyHolder社の株主たちも黙っているのだろうか。この「40億円」の差額。
 Yahoo!ファイナンスの掲示板には「ここの経営陣は株主思いではなく、秋元思いですね」と書き込まれていた。

 M&Aの実務に詳しい法律家の見解を聞いてみたいな。