嘘と正直

 新型コロナウイルスのニュースばかりが報道される中、ある小さな記事が目に入った。

 東京・葛飾の火災死亡、身元は中江滋樹さん(毎日新聞)

 投資ジャーナルの元会長だった人物だ。

 日経新聞によると、1980年代に「兜町の風雲児」と呼ばれ、約8千人の一般投資家らから株式投資のためとして約584億円を集めた。うち約18億3千万円について詐欺罪に問われ、89年に懲役6年の実刑が確定した。

 また、ある有名アイドルの肩を抱いているツーショットの写真が創刊直前の写真誌にすっぱ抜かれ、「愛人?」と本筋の事件以上に話題を集めた。

 株式投資で莫大な富を築いた中江元会長は、ある週刊誌の取材に、「全盛期は29~30歳頃。当時は体をブルッと揺すれば10億円くらいは簡単に出てきました。銀座の飲み代は一晩数百万円。愛人も10人くらいいましたし、六本木や赤坂に複数のクラブ、割烹、喫茶店を持っていた。何人もの政治家とも付き合いがあって、500万、1000万円単位で小遣いをやっていました」などとも語っていた。

 最近はすっかり名前を聞くこともなかった。

 火災は寝たばこが原因らしく、現場の写真が紙面に載っていたが、ずいぶんな「おんぼろアパート」に見えた。かつての栄華からは寂しい限りだ。一人暮らしだったという。

 投資家をだました因果応報、金と欲にまみれた哀れな男の最期かもしれないが…。

 「お前は嘘をつかずに生きてきたか?」と自問自答するなら、僕自身もなんど保身のため、見栄のため、金のため、嘘を重ねたことか、と懺悔しなければならない。嘘をついてでも守りたいものがあるんだ、と当時は必死に思っていたけれど、なにもかもなくした今になってみると、「うそをつかない生き方」を守ったほうがよかった。

 先日、「VOGUE JAPAN」が平手友梨奈のインタビュー全文をネット上に公開していた。インタビューした時期は昨年の9月15日だという。

 この中で、てちは「平手さんの軸となる価値観は?」と聞かれ、「価値観と言えるかどうかはわかりませんが、正直でいること。普段、特には意識していないけれど、私の軸はそこにあるかなと思っています」と答えていた。

 素晴らしいよね。彼女のファンになってよかったと思った。

 ただ、人生、いろんな罠がある。

 神様!彼女の不器用だけど、純粋でまっすぐな生き方を貫き通させてあげてください、お願いします。

 一方、寂しい最期を迎えた中江さんだけど、マスコミに追われることもなく、「嘘をつかなくていい、静かな晩年を送れた」のなら、本人は心穏やかに旅立ったのかもしれない、と思った。