アラ還のこの年になってアイドルにはまるとは思わなかった。
かつてウン10年、新聞記者をしていたが、その後事業に失敗し、ただ惰性で生きている。
食うために「派遣」のお仕事をさせてもらっている。1年前から、あるスポーツ新聞で働かせていただいている。昔取った杵柄も多少は役に立っているようだ。
1か月前、アイドルグループ「欅坂46」の平手友梨奈という女の子が「脱退」するのが大ニュースとして扱われていた。記事によれば、平手という子は絶対的エースなんだとか。「卒業」ではなく「脱退」という表現もショッキングなことだったそうだ。
「欅坂」も「平手友梨奈」も全く知らなかった。しょうじき、なに大騒ぎしてんだろう、というのが率直な感想だった。
たまに音楽番組を見ることがあったが、出演したアイドルグループがあまりに歌が下手すぎて呆れることもあった。あるグループのセンターの女の子がソロで歌を披露したとき、あまりの音程の外れっぷりに、こっちが恥ずかしくなったこともあった。ファンの方々には怒られるが、最近のアイドルなんて男女とも「学芸会」レベルだろうと蔑んでいた。
ただ、スポーツ紙でお仕事させていただいているから、まったく知らないのもなあ…。
紅白で「不協和音」という楽曲を披露したこと、そのパフォーマンスが話題を呼んだことなどが記事に書いてあったから、youtubeで検索してみた。
軽い気持ちで動画を見始めたが、度肝を抜かれた。
なんなんだ、この子…。鋭い正拳突きから顔のアップへ、死をも恐れない目、潔いほどの覚悟を感じさせる。そして「僕は嫌だ」という絶叫が、魂の叫びにすら聞こえてくる。
なんなんだこれ…。人生、失敗して、生きるのも正直面倒で、心から笑うことも涙することもなくなった俺なのに…。彼女のパフォーマンスに心が震わされている。彼女っていったい、何者?
時間があれば、かたっぱしからミュージックビデオや、冠番組「欅って書けない」の過去動画などをむさぼりみている。てちの出演するTOKYO FMの「GIRLS LOCKS!」のコーナーも欠かさず聴くようになった。
そう、以前からのファンの方には怒られそうだけど、いっぱしのファン気取りで平手友梨奈のことを「てち」と呼んだりしている。どうしちまったんだろ、俺。
東京ドームのLIVEのDVDも買ってしまった。恥ずかしいから家族には絶対ナイショなんだけど。
生きていることに気力をなくしていたけど、彼女のパフォーマンスがまたみたいな。
平手友梨奈さん、ありがとう。