平手友梨奈平手友梨奈

 珍しく夜勤が2日休みになったので、「宿題」に取りかかることにした。

 先日、音楽ナタリーがメジャーデビュー15周年を迎えた「RADWIMPS」を特集し、その中の企画「著名人11人が作成した“RAD愛”あふれるプレイリスト」に平手友梨奈が登場している。

 てちが作成したプレイリスト(11曲)は以下のとおり。「誰かの誕生日」をテーマとしているという。

  • 「天気の子」のテーマ
  • 針と棘
  • 棒人間
  • 五月の蝿
  • 携帯電話 (Cat Ver.)
  • 夢番地
  • 大丈夫
  • ふたたびの、雨
  • 正解 (18FES ver.)
  • 夢灯籠

 てちは、このプレイリストについて「私の中で一本の物語をイメージして考えてみました。
その物語を解説してしまうとおもしろくないと思うので、聴いて下さった皆さんの考えに委ねたいと思います。そして、このプレイリストの続きは、皆さんの自由に選んで頂けたらいいなという想いも込めました」と説明している。

 てちファンのみなさんが、思い思いにこの「物語」をひもとこうとしていた。私も…と最初は思ったけど、「RADWIMPS」のことも全然知らないし、てちファン歴も浅いし、「俺にはひもとけるわけないし、そもそも俺ごときがひもとこうとするのが僭越」と、放り出していた。

 でもね…「てちファン」だって言いたいんなら「難問」から逃げるわけにはいかない。「0点」かもしれないけどね、もっともっとてちのことを知りたいし、やるだけやってみようと決心した。

 まずは、てちの言葉を反芻してみる。
 「物語」
 「解説するとおもしろくない」
 「続きは…」

 テーマは「誰かの誕生日」。
 物語なんだから当然、登場人物がいる。そして近く“誕生日”を迎える(あるいは迎えた)。「解説するとおもしろくない」は言葉通りには受け取れない。事情があって解説できないという意味か。架空の物語ではなくて現実の物語だから解説できない、ということなのか。「続きは…」と言っている以上、登場人物は死んでいないということか。

 仮に「現実の物語」とする。てちは、この人の誕生日に強烈な思いを寄せているのだが、事情があって口を閉ざさねばならない。今回の「プレイリスト」は、その人物への秘めたメッセージが込められている…。
 
 てちがそこまで思いを寄せる人とは…? たった一人しか思い浮かばなかった。

 「欅坂46」

 4月6日がデビュー4周年の“誕生日”だった。現メンバーがそれぞれ4周年について思いを語っていたが、だれよりも欅坂46を愛し、1月に脱退するまで絶対的センターとして先頭に立ってきたてちが、何かを語ることは許されていない。
 
 誰か…とは欅坂46だったのではないか、と仮説を立ててみた。そのうえで、プレイリストを見ていきたい。

 最後から2曲目は聞き覚えがあった。

 てちの「GIRLS LOCKS!」卒業週のこと。
 リスナーの“ゆうきぼうし”ちゃんから卒業するてちへ、RADWIMPSの「正解」(18FESバージョン)がおススメ曲としておくられた。
 
 このとき、曲を聴き終えたてちは「うん、自分の中でもすごく…あ~この歌詞好きだなっていうのもあったし。ゆうきぼうしちゃんの言ってた最後の歌詞もすごい響いたし…」と感想を語っていた。

 自分なら「物語」を編むときどうするだろう。やはり、最初の1曲目とラストにこだわるだろうな。

 1曲目は「天気の子」のテーマ。
 映画「天気の子」はこんなモノローグからはじまる。
 「あの夏の日、あの空の上で、わたしたちは世界の形を決定的に変えてしまったんだ。」

 2016年4月6日、デビュー曲「サイレントマジョリティー」でわたしたちはアイドルの世界を決定的に変えてしまったんだ…。(と言い換えてみた)

 ラスト2曲をみてみよう。

 「正解」…制限時間は あなたのこれからの人生/解答用紙は あなたのこれからの人生/答え合わせの 時に私はもういない/だから 採点基準は あなたのこれからの人生/「よーい、はじめ」

 欅坂に、もう平手友梨奈はいない。欅坂第2章はあなたのこれからの人生「よーい、はじめ」。
 てちから現メンバーへおくるメッセージに聞こえてきた。

 そしてラスト「夢灯籠」。

 前の曲で、平手友梨奈が抜けた欅坂にエールをおくったてちだが、欅坂にいた4年間は「夢」のような時間だったのかもしれない。
 「僕たちの声が 世界の端っこまで消えることなく/届いたりしたらいいのにな」

 だが、夢は終わった。灯篭とは、お墓に建てられることが多く、故人を神仏のもとに導き、供養するためのもの。欅坂の平手友梨奈は死んだが、欅坂を離れた「平手友梨奈」はこれからも生き続ける。「君の名を 今追いかけるよ」と決意を示し、プレイリストを終えている。

 物語はてち自身と欅坂のこと、という仮説。

 途中の曲でも、ズシンとくる歌詞が多かった。
 ひょっとすると、てちの心情と重なるのかなって妄想した。てちには「あんたは私の何を知る」って怒られそうだけどね

 「針と棘」…僕がいけないの?/少しかわいそうな僕などと思っています
 「棒人間」…僕は人間じゃないんです(人間をアイドルに言い換えてみたら?)

 「携帯電話」 これがあるから今日もどこかの誰かのポッケの中に僕の居場所があるんだろう (ねるが、メンバーから“ケータイをなくす女”の世界一なれると指摘されたエピソードを思い出す)

 「螢」…光って消えるただそれだけ信じながら歌う僕はここにいるよ/光って消えるただそれだけと知りながら光る僕はきれいでしょう?
 「夢番地」…僕はもう数えきれぬほどの夢を叶えているんだね
 「大丈夫」…君の「大丈夫」になりたい(てちより一足先に卒業した米さんの「大丈夫やで!」を連想した)

 ただし、プレイリストの4曲目「五月の蝿」にちょっと違和感を感じた。
  「僕は君を許さないよ」と強烈な憎悪を示している。そして、「君が主演の映画」の中で、「僕」は最強最悪の悪役、という関係。

 プレイリストから読み取った物語の登場人物は「僕」と「君」。
 てちが「僕」で欅坂が「君」と考えてきたが、てちが、欅坂のことを憎んでいるはずがないし。

 仮説が間違っていたか…?

 てちにとって、その存在が強烈だった人、そんな人いたかな?

 あっ、一人忘れていたことに気づいた。誕生日はいつなんだろう。調べてみた。

 1958年5月2日、62歳

 秋元康

 この人か。

 いやいやいや…てちと秋元康の物語だったら美しくないね。却下!

 もうひとつ、考えが浮かんだ。

 1959年4月が「誕生日」の、あの週刊誌。

 一連のバッシング報道で、メンバーが、ファンが、どれだけ傷ついたかわからない。あの雑誌になら「許さない」と憎悪を炎を向けてもおかしくはない。

 ラスト2曲は、どうしてもてちと欅坂の関係に思えてくる。

 平手友梨奈や欅坂46に関する秀逸なレポートを発表しているライターのこじらぶさんが、将来、てちの欅坂復帰というウルトラCの可能性がゼロではないと書いていた。最後の歌詞「君の名を 今追いかけるよ」が、そのことを暗示していると思いたい。

 「誰かの誕生日」は4周年を迎えた欅坂へのエールと、決して「欅の名を」忘れない平手友梨奈の意志を示したプレイリスト。
 「赤点」覚悟で、それを私なりの「宿題」の答えとしたい。