なーこちゃんより“こたつ記者”が問題

 元欅坂46のメンバー、長沢菜々香さん(23)がネット上で誹謗(ひぼう)中傷などを受けているとして法的措置を取る方針を明らかにしたメッセージを、説明もなく削除し批判を浴びている件について、メディア側の責任を中心に考えてみたい。

 長沢さんのファンクラブの公式サイトは28日、「【お知らせ】ファンの皆様へ」と題するメッセージを公開した。

 会員登録しているので公式サイトからメールで更新通知が来たほか、長沢さんも自らのツイッター(フォローワー14.1万人)でお知らせしていたので、「なーこみゅ」(長沢さんのファンの総称)の方は、すぐに内容を確認したと思う。

 ※現在は公式サイトからこのメッセージは削除されているが、大手メディアなどに掲載されたものが記事として残っている。

 「日頃より、長沢菜々香を応援いただき誠にありがとうございます」とファンに向けてあいさつしたあと、

 「SNS上やビジネス用のメール等で長沢菜々香に対し様々なご意見を頂いておりますが、中には道徳的規範から逸脱している誹謗中傷、法律に反している内容と捉えれるものがございます」と、誹謗中傷に苦しめられている状況を説明。

 「つきまして、先日より刑事訴訟となりえる案件を優先的に警察を始め関係各所共に捜査を行いはじめました。民事訴訟に繋がるものに関しましても状況を見ながら適宜対応を行っていく所存です。本件に関して詳細をお伝えできる状態になりましたら再度皆様にご報告させて頂きます」としていた。

 これを読んだとき、「何言ってるのか、わけがわからない」と困惑した。

 誹謗中傷については理解できた。昨今、SNS上では「匿名」をいいことに、相手の人格を傷つけるような暴言を吐く輩がいる。ひどいケースになると、脅迫や犯行予告のようなものもある。
こうした連中に毅然とした対応をするのは賛成だ。

 ただ「捜査」という言葉にまず、ひっかかった。

 このメッセージの発信者は「長沢菜々香 Official Site 運営事務局」だが、運営事務局が「捜査を行いはじめました」ってことなのか?
 
 「捜査」を行えるのは警察や検察だ。がさ入れ、差し押さえなど人権に制限を加える場合もあり、一私人が捜査を行うことはない。

 「刑事訴訟となりえる案件」という表現にも違和感をもった。「刑事訴訟」となりえるかどうかを判断するのは検察のはずだが、運営事務局は自らにそうした権限も有していると考えているのか。

 いやいや…。私の読解力が低いせいかもしれない。警察が捜査を開始していると説明したいのだろうと考え直したが、警察は「証拠隠滅や犯人逃走」の恐れから基本的に捜査情報を漏らしたりしないはず。

 過去の経験では、警察はこの種の案件についてめったに対応してくれない。相談に行っても「被害届」すら受け付けてくれないケースがほとんどだが、長沢さんの場合、すんなり捜査に乗り出してくれた、ということのなのか。

 たしかに昨今、いろんな事件があり、警察の対応にも変化が生まれたのかもしれない。ただ、ちょっと疑問に思う。長沢さんは欅坂46ファン以外には知名度はほとんどないし、今年3月でアイドルを辞め、いまは一般人だ。有名人でもない無名の一般人の案件を、多忙な警察が優先して引き受けるものだろうか。ネット上の誹謗中傷トラブルを扱っている弁護士法人も「警察がインターネットの書き込みを名誉毀損罪や業務妨害罪で捜査するかというと、現実はあまり期待できない」と説明している。

 以上のことを頭の中で考えていた。

 メッセージを出した運営事務局に、逐一、疑問に感じたことの裏を取っていかないと、危なっかしくて(個人のブログでも)書けないと思ったし、このまま記事を書くようなメディアもいないと思っていた。

 ところが、翌日朝には、複数のメディアが、そのまま記事にしていたので、「ええっ!!そんなバカな…」と驚いた。

 ニュースが流れたあと、長沢さんは該当メッセージを削除した。私が削除に気づいたのは29日夜だった。31日現在、削除したことの説明はない。何食わぬ顔で、別のブログ記事をアップしたり、ツイートしたりしている。

 それもなあ…と思うが、

 元記者からすると、こたつ記事、こたつ記者のほうが嘆かわしい。